日本家屋の魅力

数ある歴史の中で確立されてきた日本建築。それらを活用しながら建てられた日本家屋には、深い味わいと魅力があります。


今回の記事では日本家屋の持つ魅力について、その素材やつくりにより深くせまっていきます。


日本家屋の屋根について


日本家屋を語るにあたって外せないのが、屋根のつくりです。日本家屋の屋根の多くには、雨水によって家屋の木材が傷むのを防ぐため、瓦を使用しています。整然と敷き詰められた瓦は見た目も美しく、耐用年数も長いとされています。


また、日本家屋における主な屋根の形は以下の3種類です。

切妻屋根(きりづまやね)

両側に傾斜があり、本を開いて逆さにしたような形が特徴の造りです。三角形の形が特徴となっており、古来から現代まで、日本の民家に広く用いられてきました。構造が単純であることから建築コストを抑えられるという利点があります。

 

また、日本は雨が多いことから、雨水による被害を極力抑えられる屋根が好まれがちで、切妻屋根は勾配があることに加えて接合部も少ないつくりです。

この特徴から、雪が屋根から自然と落ちてくれるため雪の重みが家にとどまることが少なく、雪が多い地域においてもよく使用されている様式となっています。

通気性の高さと雨漏り、雪への強さから、四季折々の日本の風土にも適した屋根であると考えられています。

 

寄棟屋根(よせむねやね)

4方向に勾配がついており、棟に向かって4つの面が寄り集まっている形のため、寄棟と呼ばれている様式です。寺院などの格式高い建物によく使われた様式です。さらに、屋根の面が4つになることで風や日差しから壁を守りやすくなるという利点から、台風が多い地域や海のそばでの地域、積雪が少ない地域などでよく用いられてきました。

 

日本の気候の変動の大きさにも耐えうるどっしりとした佇まいから、和風・洋風と住居の雰囲気を選ばず落ち着いた印象を与えてくれるつくりとなっています。

入母屋屋根(いりもややね)

上記で紹介した切妻屋根と寄棟屋根を組み合わせたような形です。家屋の上部が切妻屋根、下部は寄棟屋根となっており、名前の由来は母屋の中に屋根が入った形状だからだと言われています。地方によっては母屋、母屋造りとも呼ばれており、城や神社、仏閣などで多く見られる様式です。

 

屋根を2つ重ねた形状から、重厚感や格式高さを演出することができる様式となっています。屋根の構造も複雑なため、高度な技術をもった職人の手によって作られる様式です。

 

母屋(もや・おもや) -  本項においては、家屋の中央の部分。



日本家屋における内装の特徴

畳(たたみ)

日本家屋の内装において、床にはい草を編み上げた畳が多く使われています。

畳が今の形状となったのは平安時代(794年~1192年)からだとされていますが、現代のように部屋に敷き詰めるのではなく板敷に寝具として置く使い方をしていたそうです。

実際に現代のように部屋全体に敷き詰めるようになったのは書院造が広がった室町時代(1336年~1573年)からだとされています。現在では、日本国外でも日本家屋とともに人気を広げています。

調湿性や吸音性の高い素材であることに加えて、クッション性があることから室内でくつろぐことにも適しており、子供のいる家庭でも危険性をやわらげてくれます。

 

さらに、い草のやわらかな香りは気持ちを落ちつけてくれることから、家の中に落ち着ける空間を作ることができる、というのも大きな魅力のひとつです。

 

書院造(しょいんづくり) - 公的な対面や交渉などを行うための客間でもある「書院(しょいん)」が設けられたつくりのこと。

障子と襖

日本家屋では部屋同士を仕切るための建具として、障子と襖がよく使われています。元々は平安時代から使われており、当時の自然の調和するための建築様式と共に組み込まれていました。

 

それぞれのつくりの違いとしては、障子は格子状の木枠の片側に和紙でできた障子紙を貼っている戸を指しており、襖は木などの骨組みの両面に紙や布を貼り、引手や縁をつけた戸のことを指します。

障子の役割

主にサッシの窓内や縁側に使用されることが多く、間仕切りとしてもよく使われます。片面に和紙を貼ったつくりであるため、日光が部屋全体にいきわたりやすいというメリットもあり、外部からの視線を遮りつつやわらかな光を取り入れやすいことから、心地よい空間を作ることができます。

 

さらに、窓と障子を組み合わせている場合は窓と障子の間に空気の層ができることから窓の冷気を伝えにくくしてくれ、断熱性を上げてくれるとも言われています。

襖の役割

押し入れや仏間、和室の可動式の間仕切り、そして室内装飾として用いられることが多くあります。例えば襖を開けることにより大広間として使用したり、襖で部屋を仕切ったりといった形で自由に使い分けが可能です。障子とは違い、日光を遮るため窓際に設置することは少ないです。

 

なお、調湿効果も兼ね備えており、湿気が多い時には水分を吸収、乾燥している時には水分を放出して調節をしてくれます。さらに、枠を組んで紙を両面に何重にも貼る構成のため、襖も高い断熱性も期待できるつくりです。

自然と共に暮らす家

 

日本家屋は、木材や漆喰・珪藻土のような素材を使って建てられています。特に木材は縄文時代から建築の材料として使用される機会が多くありました。暑さや湿気を防ぐために、風通しを良くするなど様々な試行錯誤が重ねられることで現代における木造家屋で快適に暮らすための知恵と工夫がこらされています。

 

こうした自然素材を多く使用している日本家屋は、伝統的な工法などを大切にしながら、自然と人間が共生し、五感で自然を感じられるつくりです。



土間(どま)

 

室内において、床板を張らず土足で歩くように作られた空間をさします。玄関と履き物を脱いで上がる居室との間に作られることが主です。かつては農家などで汚れてもいい作業を行うための空間として利用されており、農作業の休憩場所や、農機具や野菜の保管場所、そして竈(かまど)による煮炊きなどを行ったり、漬物や味噌を収納していました。

かつては床材は三和土(たたき)という土ににがりを混ぜて仕上げることが多くありました。

現代でこのような形を見かけることは少なくなりましたが、住宅建築においても土間そのものは見直されており、現代のライフスタイルに沿ったモルタルやタイルを張った土間を玄関スペースに設けて、リビングの延長線としても利用されています。

竈(かまど) - 鍋などをかけて、その下で煮炊きを行うための設備。

 

縁側(えんがわ)

和室と屋外の庭との間にある空間のことで、建物の縁(へり)から張り出して造られた板敷きの通路のことを縁側と呼びます。日本家屋といえばの要素の一つで、日本家屋ならではのもので、自然に対して開かれたつくりです。

 

建物の外周に造られる縁側は「濡れ縁(ぬれえん)」、雨戸や窓の内側に造られる縁側は「くれ縁(くれえん)」と呼ばれます。

 

寒暑や雨風から室内を守る機能や、部屋と部屋を切り離したり繋いだりする役割を持ち合わせているだけではなく、庭の景色や日本ならではの四季の移り変わりを見られるような配置です。玄関よりもゆるやかに外と繋がれる空間であることから気軽に立ち寄りやすく、交流場所としても機能していました。

 

「禅(ぜん)」の考え方

「心が動揺することがなくなった状態」のことを指す「禅」という考え方は、日本の暮らしにも通ずる部分があります。禅は、元々は精神を統一して真理を追究するという意味のサンスクリット語を音訳した「禅那(ぜんな)」の略語です。

自分自身を見つめなおし、無駄を省き、万物に感謝するという考え方のことを指しており、この考え方を取り入れた日本文化としては日本庭園や枯山水が有名です。

 

物や情報に溢れ、変化がめまぐるしい現代において、喧騒から離れて物事の本質を見つめる考え方でもある「禅」。

これらは無駄を省いたシンプルで洗練されたスタイルを重視するコンセプトとして、日本国内はもちろん海外においてもインテリアなどで取り入れられています。

 

まとめ

 

本記事では、日本家屋の魅力について紹介してきました。

 

日本家屋は素材のひとつひとつを大切にしており、さらに自然との調和も意識した造りとなっています。伝統を重んじながら、心地よい空間を作り出すための試行錯誤を重ねてきたからこそ、古来から現代にかけてさらなる洗練さが生み出されているのです。

 

 

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