日本建築における「境界」: 外と内のあいだにある空間

Traditional Japanese architecture and garden
A traditional Japanese garden and the space between architecture and nature. Photo via Unsplash.
日本の古い家を歩いていると、 「ここからが外で、ここからが内なのだろう」と考えることがあります。 縁側は屋根があるけれど、風は入ってくる。 軒下から庭が続き、障子を閉めても光は室内に残る。 日本建築には、外と内を完全に切り分けるのではなく、 そのあいだにいくつもの場所をつくる考え方があります。 その「境界」に目を向けると、 日本の建築が光や風、庭、季節とどのようにつながってきたのかが見えてきます。
01 · The Boundary

内と外のあいだ

日本建築の「境界」は、ひとつの線として存在しているわけではありません。

庭があり、軒下があり、その内側に縁側がある。 さらに障子や襖を隔てて、畳の部屋がある。

外から内へ移動するにつれて、 空間の性格が少しずつ変わっていく。 その連続そのものが、日本建築の大きな特徴のひとつです。

境界は、閉じるための線ではなく、
距離を調整するための場所でもある。
02 · Engawa

縁側という場所

縁側は、単なる「廊下」ではありません。

家の内部と庭のあいだに位置し、 人が座ったり、話したり、庭を眺めたりする場所でもあります。

部屋の中に完全に入るわけでもなく、 かといって庭に出てしまうわけでもない。 その曖昧な位置に、縁側のおもしろさがあります。

Japanese engawa and garden
The engawa creates a gradual transition between the room and the garden.

ここでは、庭もまた建築から切り離されたものではありません。 窓や縁側から見える庭は、室内で過ごす時間の一部になります。

03 · Light

光も、境界を越えてくる

障子もまた、外と内のあいだにあるものです。

障子を閉めれば視線は遮られますが、 光まで完全に遮るわけではありません。

朝の光、曇りの日の柔らかな明るさ、 夕方の色。 外の変化が、紙一枚を通して室内に伝わります。

Sunlight entering a traditional Japanese room through shoji
Light filtered through shoji in a traditional Japanese room. Photo via Unsplash.

障子や襖の存在によって、 部屋は固定されたひとつの空間ではなくなります。

開ければ庭とつながり、 閉めればひとつの部屋になる。 そのときどきの過ごし方に合わせて、 空間の距離を変えることができます。

04 · Doma

土間—外が家の中に入る

反対に、外の世界が家の内部へ入り込んでくる場所もあります。 その代表が土間です。

土足のまま入ることのできる土間は、 屋外と室内の中間に位置する空間として、 かつての日本の家でさまざまな役割を担っていました。

仕事場、台所、収納、出入りのための場所。 生活と外の世界が、完全には分離されていません。

日本建築のおもしろさは、
「外にあるもの」を家の外へ追いやらないところにもある。
05 · Architecture & Garden

建築と庭を分けない

日本の伝統建築を見るとき、 建物だけを切り取って考えると見えなくなるものがあります。

庭、池、石、木々、光。 それらは建物の外側にある「背景」ではなく、 建物の中から経験される空間の一部でもあります。

Traditional Japanese building surrounded by a garden
Architecture and garden experienced as one continuous space. Photo via Unsplash.

建物から庭を見る。 庭から建物を見る。 その両方を行き来することで、 建築の経験そのものが変わります。

だからこそ、日本建築では「建物」と「庭」を 別々のものとしてではなく、 ひとつの体験として考えることができます。

06 · Why It Matters

なぜ「境界」が重要なのか

もちろん、日本のすべての建築が同じ考え方でつくられているわけではありません。

けれども、縁側、軒下、障子、土間といった空間を見ていると、 外と内を完全に切り分けるのではなく、 そのあいだに余白をつくるという考え方が繰り返し現れます。

そこには、光や風を取り入れるという実用的な理由もあります。 同時に、季節や庭との距離を調整しながら暮らすための 空間的な工夫もあります。

「境界」は、何かを遮断するためだけのものではない。 その間に、人が過ごすための場所をつくることもできる。

BYAKKO'S VIEW

境界の「あいだ」にあるもの

BYAKKOが古いものに惹かれる理由のひとつは、 そこに時間の層が残っているからです。

建築も、器も、衣服も、 使われることで少しずつ変わっていきます。 傷がつき、色が変わり、手を入れられる。

そうしたものを見るとき、 「新しいか、古いか」という二つのカテゴリーだけでは 捉えきれないものがあると感じます。

日本建築の境界について考えることも、 その「あいだ」にあるものを見ることなのかもしれません。

One Thing to Know

「縁側」はひとつの形だけではない

一般に「縁側」と呼ばれる空間にも、 建物や地域、時代によってさまざまな形式があります。

外部に近い場所に設けられるものもあれば、 建物の内部寄りに設けられるものもあります。 その違いを見ると、 「縁側=廊下」という単純な理解ではなく、 内外の距離を調整するための空間として捉えることができます。


境界の、その先へ

建築を見るとき、 壁や柱だけを見るのではなく、 そのあいだにある空間を見る。

どこから外で、どこから内なのか。 その答えが曖昧な場所にこそ、 建築のおもしろさが残っているのかもしれません。

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